ふるめも

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「追伸 ソラゴトに微笑んだ君へ3(ファンタジア文庫) / 田辺屋敷」感想・レビュー

※SFギミックのネタバレを含む内容なので未読の方はご注意を

個人評価:★★★★★

街にクリスマスソングが響く季節。ユミたちの問題を解決した俺は、また普通の日常に戻る、そう思っていた。なのになぜ、お前が俺の学校にいる?なぜ俺との記憶を喪っている?いや、それよりもなぜ、ハルカの本性が消失しているんだ―?初の事態に俺は、解決の糸口を探す為、驚くほど優しいハルカへの接近を試み、一緒にテスト勉強や、クリスマスパーティーの準備をしたりと、暖かさと違和感を覚える毎日を過ごしていたが、クリスマス当日、今のハルカからありえない筈の言葉を投げかけられ―「篠山くんが『篠山マサキ』だったんだね」こいつは…とびきり面倒な現象に巻き込まれたらしいな。

 強烈な終わり方をした2巻から待望の第3巻。最終巻となります。単純にジャンルが私の好みなので評価点はやや高め。

 冒頭にも書きましたが、SFギミックのネタバレを含む内容となるので未読の方はご注意を。普段はあまり気にしていないのですがこういった作品では話の核となる部分のネタバレを踏んでしまうとちょっとちょっと~となってしまうので一応。

 葉書による過去改変未来から来るメールに続き最終巻を飾るのはSFの王道である時間遡行タイムリープです。

 形代を切断することにより後悔する分岐点へタイムリープできることに気付いたマサキ。今の世界線に移行した原因を突き止める名目で自分との記憶を喪っているハルカとの交流を深めることを中心にタイムリープを繰り返します。条件が簡単であるためちょっとしたことでもタイムリープするためそれはもうびっくりするくらい繰り返しています。時間を遡行することしかせず未来(現在)に時間軸を飛ばすことがないためタイムパラドックスバタフライエフェクトといったことはあまり気にしなくて良いでしょう。

 いくつかの選択肢から1つを選んだという描写が数回あり、わかりやすくはあったものの若干のわざとらしさも感じました。ほとんど好みだと思いますが個人的にはそこまで露骨に書かなくても良かったかなあといった印象。わざわざ選択肢として示さなくても理解できる状況が多く、少しノイズとなってしまいました。まあ本当に好みだと思いますが。

 そしてギミック詰めとなるのはハルカも形代を使った時間遡行をし葉書投函による過去改変を行っていたこと。ヒロイン側もギミックを使っていて…というのは珍しく、しっかりと練られた設定なのですがちょうど直近に「二周目の僕は君と恋をする」があったのが惜しかったです。や、誰も悪くないんですけど。

 そのハルカ側の展開ですが個人的に少し伏線が細かったかな、と感じました。終盤に2巻での何気ない行動に対し「考え方を変えるともしかしたら…?」と紐解いていくのですが何気ない行動が何気なさすぎます。勿論そういった方面のアプローチなのは分かっていますが、こういったギミックが解かれる際は今までちょっと引っかかっていた部分が全部繋がっていくのが痺れるので引っかかりが弱いと何となく後付けされた設定のようにも感じてしまいますね(今作がそうではないのは分かっていますが)。まあ私が文面通り読みすぎていて、しっかりと伏線を拾えている方もいると思うのでアレなんですけど。

 何やかんや言いましたが展開、そして終わり方としては素晴らしかったと思います。1,2,3巻と歩んできた世界線、それぞれのハルカとの経験があったからこそ行き着いた結論であったと思うし、最後のギミックとして使われたタイムリープもそれに非常に噛み合っていました。

 正直同じ学校になりつつも全て覚えていてハルカが死ぬこともないといった詰め合わせの世界線で終わると思っていたのですが、あの世界線で終える意味も強く感じられ、まだ見ぬ未来へ向かっていく2人のこれからが楽しみです。

 2巻が賛否両論といった雰囲気はありましたが終わってみるとどれも必要なよく練られた作品であり次回作も楽しみです。