ふるめも

アニメ、アニソン、ラノベ、イベントなどの感想、レビュー的なもの。

「僕と君だけに聖夜は来ない(角川スニーカー文庫) / 藤宮カズキ」感想・レビュー

個人評価:★★★★☆

12月24日の夜。高校生の理一は、片想いの相手・なつみと結ばれる。しかし喜ぶ間もなく目の前で彼女は命を落とし、気づけば2日前に戻っていて…。「好き」をトリガーに時間が巻き戻ることを知った理一。大好きな彼女の告白を回避しようとするが、どう足掻いてもなつみは告白し、死んでしまって、そしてまた―「好きだよ、理一。君が好き」クリスマスイブに閉じ込められた理一は、繰り返す悲劇を越え、未来を手に出来るのか。

 12月24日。高校生の理一が片想いの相手・なつみから告白されるが、それと共に彼女には唐突な死が訪れる。気がつくと22日に戻っている理一が彼女の死を回避しそのループから抜け出すために奮闘する物語。相変わらずこのジャンルは好みのため評価高め。

 繰り返しの中でヒロインを生き残らせるという方向性はこういったジャンルでは王道な展開ですね。その中でも今作の魅力となるのは主人公とヒロイン間の"依存"の強さであったと感じます。

 終盤でもう一人のキーパーソンであるリンカが出てきますが基本的に2人のみしか登場せずに進んでいくこの物語。視点は理一による一人称が主ですがお互いがいかにお互いを必要としているか、いかにかけがえのない存在なのかという点が濃く描かれています。読み手を引き込むその関係性はループを抜け出そうと藻掻く理一と物語の展開に強い説得力を持たせ、そこに生まれる感情をしっかりと共有させるものとなっていました。

 またループ以外にもSF要素が取り入れられていましたが、終盤のリンカと共に絡められたその設定は丁寧に練られていて2人の物語に上手く溶け込んでいました。リンカの正体等分かりやすく触れられている部分もありますが、軽い伏線のような部分からリンカや2人の未来についても色々と考察できる部分もあり、素晴らしい一冊だったと感じます。1巻完結でループする3日間の物語なので仕方ないのですが、そこ以外の描写がほぼ無いためもう少し幅広い時間の2人を見たかったなあと。いや仕方ないんですけどね。