ふるめも

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「親しい君との見知らぬ記憶(ファミ通文庫) / 久遠侑」感想・レビュー

個人評価:★★★★☆

夢の中で見知らぬ少女と出会い、共に過ごすようになっていた幸成は、ある日、初めて訪れた場所に既視感を覚え、そこで夢の中の少女・優羽子と出会う。そして何と彼女もまた夢で幸成と出会っていたと言う。それから二人はその現象を確かめ合うため、一緒に出かけるようになり、やがて恋に落ちる。しかし全てが順調に思えたある日、突然優羽子が倒れ、意識不明の状態に陥ってしまい…。同じ夢を共有する二人の、ある奇跡を辿る物語―。

 経験したことのないはずの同じ夢、記憶を共有する2人が出会う物語。平行世界の存在をメインにSFを絡めたボーイミーツガールですが、SF要素を軸に話が展開するのではなく幸成と優羽子の物語にSF要素がアクセントとして添えられているような形です。

 出会ったきっかけは特殊でしたがそこから2人が人生を歩んでいく様子は何も変哲がなく、物語としてはだいぶ面白みに欠けます。またあらすじにある「突然優羽子が倒れ」という起承転結の転にあたる部分も他の作品に比べると割と後半に展開されるため、そこから解決へと盛り上がる部分がやや駆け足となっていました。しかし作者の生み出す世界観とその言葉が生み出す独特な雰囲気は魅力的で、作品としては素晴らしいものがありました。

 SF関連の設定が少し難しく分かりにくい気もしますが、読み解けるだけの描写はあったと感じます。ただ状況説明が丁寧すぎるため各キャラクターが上手く際立たず、感情移入的に作品にのめり込むことがあまり出来なかった印象もありました。総じて作者の雰囲気が合うかどうかで好みが分かれる作品だと思います。遊園地やプールを始め、物語の舞台となっていたのが比較的近所だったので親近感を持って読めましたこともあり個人評価はややプラスで(笑)。