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「86―エイティシックス―Ep.3 ―ラン・スルー・ザ・バトルフロント―〈下〉(電撃文庫) / 安里アサト」感想・レビュー

個人評価:★★★★★

敵“レギオン”の電磁加速砲による数百キロ彼方からの攻撃は、シンのいたギアーデ連邦軍の前線に壊滅的被害を与え、レーナが残るサンマグノリア共和国の最終防衛線を吹き飛ばした。進退極まったギアーデ連邦軍は、1つの結論を出す。それはシンたち「エイティシックス」の面々を“槍の穂先”として、電磁加速砲搭載型“レギオン”の懐に―敵陣のド真ん中に突撃させるという、もはや作戦とは言えぬ作戦だった。だがその渦中にあって、シンは深い苦しみの中にあった。「兄」を倒し、共和国からも解放されたはず。それなのに。待望のEp.3“ギアーデ連邦編”後編。なぜ戦う、“死神”は。何のために。誰のために。

 ギアーデ連邦編後編となる今巻。レールガンを搭載した<レギオン>である電磁加速砲形(モルフォ)の討伐がメインの展開。その中で自由を手に入れたシンのなぜ生きるのか、何を望むのか、何を目指して進むのかといった葛藤もテーマとして描かれています。

 緻密な設定とその世界観から生まれるディストピア感、そしてそのストーリー展開はやはり独特な魅力があります。シンとレーナの再会という結末が分かっているこそ、シン達のレーナへの感情や死んだと思っている会話が幼稚な描写にならず、希望を抱きながら読み進めることができました。

 話としては本当に申し分ない面白さだったのですが、今までに増してとにかく読みづらかったです。特に序盤ではシン達前線とエルンストら連邦内部に加え<レギオン>視点での描写も多いため視点の転換が多く、また情景描写で物語が進んでいくことが多いため字面を何となくなぞっているだけだと頭が追いつきません。必要な情報・設定であることは分かっていても親しみのない漢字や言い回しがどの描写でも多く、"表現によって読者が取り込まれる"という意味での盛り上がりがあまりありませんでした。まあそれによってシン達の感情の起伏的なものが表現されていたりして良いという見方もあるしそもそも話が面白いので良いのですが。

 レーナ視点の話をもう少し見たかったですが今回はギアーデ連邦編ということで仕方なしですね。ブラッディレジーナと呼ばれるようになるまでの指揮官ぶりも気になりますが、次巻以降では成長したレーナからそういった部分も感じられそうです。

 とりあえず第一部が終わり。次巻はわちゃわちゃしたライトな雰囲気でいくそうですが果たして本当にライトになるか。