ふるめも

アニメ、アニソン、ラノベ、イベントなどの感想、レビュー的なもの。

2017年新作ライトノベル10選

 年末なので何でもまとめがち。

2016年12月~2017年11月に1巻が発売したもの

完結、未完関係なし

で好きなもの、オススメなものをまとめていきます。11月で区切ってるのは今月の新刊がまだそこまで読めてないのと去年の12月発売で入れたいのがあったからってだけですね。

 1年通して読んだのが150冊くらいなので全然たくさん読んでいる訳でもないし出版社が偏ったりしていますがまあ。

 読書メーターに感想を書いているものがあったりするのでちょいちょいリンクを貼ったりしています。ブログには最近移行したばかりなので記事書いてるのは無かったですね。

月とライカと吸血姫(ガガガ文庫)

著:牧野圭祐 既刊2巻(1巻発売日2016/12/20)

いまだ有人宇宙飛行が成功していなかった時代。ツィルニトラ共和国連邦の最高指導者は、人間をロケットで宇宙に送り込む計画を発令。その裏では、実験飛行に人間の身代わりとして吸血鬼を使う『ノスフェラトゥ計画』が進行していた。閉鎖都市で訓練に励む宇宙飛行士候補生のレフは、実験台に選ばれた吸血鬼の少女、イリナの監視係を命じられることになる。上層部のエゴや時代の波に翻弄されながらも、ふたりは命懸けで遙か宇宙を目指す。宇宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女が紡ぐ、宙と青春のコスモノーツグラフィティ。

 吸血鬼ということでファンタジー要素はあるものの史実を元にした本格派のボーイミーツガール。リアリティのある政治体制の中で必死に夢を追い求める情熱や宇宙への憧れは胸を高鳴らせます。想いを寄せていく人と吸血鬼の2人を始め、個性的なキャラクターが多く、またその種族や立場の違いを丁寧に描いたもどかしさと恋い焦がれる想いはとても読み応えがあります。

友人キャラは大変ですか?(ガガガ文庫)

著:伊達康 既刊3巻(1巻発売日2016/12/20)

俺の友達、火乃森龍牙は“本物の主人公”だ。まず、こいつは過去をほとんど話さない。で、授業をよく抜け出す。帰ってきたかと思えば、唇から血を流してたり、制服が破けてたりする(世界の敵とかと戦っているんだろう)。そして、龍牙の周りには常に誰かしら美少女がいる。そんなときは俺の見せ場だ。「おいリューガ!どうしてお前が雪宮さん(美少女)と知り合いなんだよ!」無駄に騒がしく龍牙の日常を彩る―それが“友人のプロ”たる俺、小林一郎の生き様だからな!ベストフレンダー小林がおくる最強助演ラブコメ、爆誕!!

 俺TUEEEする学園バトルモノ。そんなジャンルの作品は無数にありますがこの作品はそんな無双する主人公の"友人"に焦点を当てた物語です。友人がメインストーリーを綺麗に進行させるための苦悩、そしてその喜びを描いた作品が面白くないわけがありません。勿論ずっとただの友人でいられる訳もなく主人公や多数のヒロインとの関係がどんどん拗れていくのですが何かも本当に面白すぎる!となります。

俺たちは異世界に行ったらまず真っ先に物理法則を確認する(ファミ通文庫)

著:藍月要 既刊3巻(1巻発売日2016/12/28)

高等専門学校(高専)に通う雨ケ谷幹人は、学校の友人11人と中学生の妹と共になぜか異世界へ飛ばされた!そんな彼らがまずやったのは、物理法則の確認。摩擦、重力、大気構成―自分たちの知識を駆使して周辺を調べあげるメンバー。そして始まるサバイバル生活を想像して落胆するのだが…。そんな中で見つけたのは、ある魔道具。それが彼らの運命を大きく変えていく―。のちに魔法技術の礎を築きあげ“賢人”と称された英雄たちの物語が、今始まる!

 1巻あとがきにあるように「俺たちは異世界に行った(と仮定できる状況になった)らまず真っ先に物理法則(及び広義でそれと呼ばれるようなもの)を(できる限りで)確認する」話。高専生がその知識を活かして魔法を始めとした異世界の法則を理解し順応していく展開は新鮮でありその探究心に胸躍らされます。専門的な知識が多少出てきますが自然な流れで読者を配慮した説明が入るので読みやすいです。

 作品のアプローチが非常に面白いですが、各キャラクターの関係性も上手く掘り下げていて学生の人間関係、恋愛模様を描いたものとしてもとても楽しめます。

俺たちは異世界に行ったらまず真っ先に物理法則を確認する ふるさんの感想 - 読書メーター

賭博師は祈らない(電撃文庫)

著:周藤蓮 既刊2巻(1巻発売日2017/03/10)

十八世紀末、ロンドン。賭場での失敗から、手に余る大金を得てしまった若き賭博師ラザルスが、仕方なく購入させられた商品。―それは、奴隷の少女だった。喉を焼かれ声を失い、感情を失い、どんな扱いを受けようが決して逆らうことなく、主人の性的な欲求を満たすためだけに調教された少女リーラ。そんなリーラを放り出すわけにもいかず、ラザルスは教育を施しながら彼女をメイドとして雇うことに。慣れない触れ合いに戸惑いながらも、二人は次第に想い通わせていくが…。やがて訪れるのは二人を引き裂く悲劇。そして男は奴隷の少女を護るため、一世一代のギャンブルに挑む。第23回電撃小説大賞・金賞受賞作!

 第23回電撃小説大賞金賞作。大賞作の「86―エイティシックス―」の影に隠れがちですが個人的にはこっちも大好きです。

 賭博を主軸にしたボーイミーツガール。ストーリー展開だけ見ると突飛なことはないですが賭博、駆け引きの描写のリアリティや心理・心情描写が凄まじくここまで引き込まれる作品は他にないと思います。賭博師という職業から「負けない」「勝たない」生活をしていたラザルスの無気力な日常がリーラとの出会いで変わっていく様子も胸が熱くなります。

君に恋をするなんて、ありえないはずだった(宝島社文庫)

著:筏田かつら 全2巻(1巻発売日2017/03/25)

千葉県南総にある県立高校に通う地味で冴えない男子・飯島靖貴は、勉強合宿の夜に、クラスメイトの北岡恵麻が困っているところを助けた。それから恵麻は、学校外でだけ靖貴に話しかけてくるようになった。しかし靖貴は恵麻に苦手意識を持っていて、彼女がどうして自分に構うのかわからない。地味系眼鏡男子と派手系ギャル。絶対に相容れないはずの二人に起きる、すれ違いラブストーリー。

 地味な眼鏡男子と学内トップレベルの美女である派手系ギャルがちょっとしたきっかけからお互いを意識していく物語。学内での体面を意識した描写が丁寧でそこから生まれるすれ違いや学園恋愛モノらしい甘酸っぱさが本当に最高です。

 元が「小説家になろう」に書かれていたものなのもあり1巻が結構中途半端なところで切れてしまうため(それはそれでもどかしくて良いですが)、個人的には2巻まで一気に読んでしまうのをオススメしたいです。

君に恋をするなんて、ありえないはずだった ふるさんの感想 - 読書メーター

読者と主人公と二人のこれから(電撃文庫)

著:岬鷺宮 全1巻(発売日2017/04/08)

この物語さえあれば、他に何もいらない。この小説『十四歳』と、その中に確かに息づく主人公、トキコがいれば―。だが、彼女は俺の前に現れた。灰色の毎日の始まりになるはずだった、新学年のホームルーム。黒板の前に立った彼女こそは、俺が手にした物語の中にいたはずの「トキコ」だった。物語の中にいる「トキコ」と、目の前にいる「柊時子」のあいだで、奇妙に絡まってゆく想い。出会うはずがなかった読者と主人公の物語。その結末に、あるものは―。

 小説「十四歳」とその主人公トキコに共感し思いを馳せる細野晃とそのモデルとなった柊時子が出会い恋をする青春恋愛モノ。これぞ青春!といったむず痒く歯がゆい展開や友人達との会話がとにかく最高です。学園、青春、恋愛といった要素が好きな人には堪らない傑作。

読者と主人公と二人のこれから ふるさんの感想 - 読書メーター

緋色の玉座(角川スニーカー文庫)

著:高橋祐一 既刊2巻(1巻発売日2017/05/01)

かつての栄光を失い、虚栄と退廃に堕ちた6世紀の東ローマ帝国。国の危機を憂う生真面目な騎士ベリスが出会ったのは、世の全てに退屈する型破りな書記官プロックスだった。正反対な性格ながらも互いの才覚を認め合う二人は、東より迫るペルシャ軍との最前線アルメニアへ。敗色濃厚な戦況下、プロックスの奇策が、若きペルシャの雄ホスローを迎え撃つ!帝国復興のため激動の戦場を駆け抜けた、稀代の名将と天才軍師の戦記物語。

 6世紀の東ローマが舞台の史実に基づいた戦記。ほぼ史実通りということで緊迫感のあるストーリー展開になっています。重すぎる文章にならないように各キャラクターにあだ名があったりおちゃらけた会話があったりしますが、そのさじ加減が絶妙で硬派な作品でありながらもラノベとして各キャラクターや世界観を楽しむことができます。

始まりの魔法使い(スニーカー文庫)

著:石之宮カント 既刊2巻(1巻発売日2017/05/20)

かつて神話の時代に、ひとりの魔術師がいました。彼は、“先生”と呼ばれ、言葉と文化を伝え、魔法を教えました。そんな彼を人々はこう呼びました。―始まりの魔法使い、と。そんな大層な存在ではないのだが―「だから火を吹かないで!」「ごめんごめん。私にとってはただの息だからさ」竜として転生した“私”は、エルフの少女・ニナとともに、この世界の魔法の理を解き明かすべく、魔法学校を建てることにした。そこで“私”は、初めての人間の生徒・アイと運命の出会いを果たした―。これは、永き時を生きる竜の魔法使いが、魔術や、国や、歴史を創りあげる、ファンタジークロニクル。

 大まかな区分としては異世界転生モノですがアプローチが他作品とは全くの別物。"ファンタジーとしての世界が始まるまでの物語"ということで異世界での魔法や言葉に対して様々な視点からそれらを解き明かし文化を築いていく物語です。アプローチが良く本筋だけでも十分に読み応えがありますが、異世界で様々な種族が交流していく様も丁寧に描かれています。それは心温まるものでありながら種族間での越えられない壁を描いたもどかしさもあり、異世界や異種族に対して丁寧な視点を持ったこの作品だからこそ味わえるものだと感じます。

始まりの魔法使い1 名前の時代 ふるさんの感想 - 読書メーター

我が偽りの名の下に集え、星々(ファミ通文庫)

著:庄司卓 既刊1巻(1巻発売日2017/05/30)

百名近い皇子達が覇権を賭けて争う時代に、突如現れた皇子ミロ。行方不明だったはずの彼は妹と婚約者を伴い、貴族と資産家の子息のために創設された帝国学園に入学する。そこは権力と貧富の格差渦巻く帝国の縮図と化していたが、その様々な問題を、剛胆な策略と得体の知れないスペシャリスト達と共に解決してゆくミロ。しかしカリスマも才気も備えたその皇子ミロは、実は偽者だった―!!友の意志を継ぎ皇子となった少年の入れ替わり英雄譚、開幕!

 最近は異世界に飛びがちですがSF絡みのスペースファンタジーということで好きな人は好きそうな作品。世界観やキャラクター、またキャラクター間での関係性や勢力といった設定といわれる部分がとにかく莫大すぎて読むのがかなりキツイです。しかしその情報量で潰されることはなく、各キャラクターの魅力やその状況での思惑などよく描かれていて読み応えのある一冊でした。人を選びそうな作品ですが個人的にはオススメしたいです。

我が偽りの名の下に集え、星々 ふるさんの感想 - 読書メーター

平浦ファミリズム(ガガガ文庫)

著:遍柳一 全1巻(発売日2017/07/19)

五年前、ベンチャー企業の社長である母を亡くした平浦一慶。残されたのは、喧嘩っ早いトランスジェンダーの姉、オタクで引き籠りの妹、コミュ障でフリーターの父だった。かくいう一慶も、高校にもろくに通わず、母譲りの技術者としての才能を活かし、一人アプリ開発に精を出す日々を送っていた。穏やかな家庭での日常。退屈な学校生活。そんな現状を良しとしていた一慶だったが、たったひとつの事件をきっかけにして、事態は徐々に、彼の望まぬ方へと向かっていくこととなる…。第11回小学館ライトノベル大賞ガガガ大賞受賞作品。

 ただただ良い作品。高校にろくに通わずアプリ開発で自立した生活を送っていた一慶が他人と触れ合うことで変化していく様子やその世界に思う感情に胸を打たれます。何を思って生きるのか、日々を過ごすのかといった部分は読み手にも強く訴えかけてくるものがありました。キャラクターの性格や要所の展開ではラノベらしいエンタメ性もありましたが、それにより読みやすく入り込みやすい作品になっていたとも感じます。